医療・健康コラム

認知症の進行?重大な病気を見逃しているかもしれません

「困ったなあ。最近、婆さんの認知症が急に進んだ。どうしよう。」

こんなご相談を患者様のご家族からいただきました。
皆さんは、どうされますか?次の症例を一緒に考えてみましょう。

Mさん 85歳 女性 
混合性認知症の場合

  • 81歳より、記憶障害が出現する。
  • 82歳から、同じ食材を毎日購入するようになった。
  • 84歳には調理ができなくなる。

自宅のマンションが見える範囲しか外出できなくなり、物盗られ妄想が悪化した。急須を直接ガスコンロにかけ出火の危険性も出現した。配食弁当を委託するが受け取りができないため中止した。この頃になると、ガスコンロや電子レンジも使用できない事も多く、迷子になる為に外出もできず自宅に閉じこもる生活が続き認知機能はますます悪化した。

85歳の春より、せん妄が出現した。30~40kgある食卓のガラスのテーブルを取りはずし怪我をする。窓に向かい大声で怒鳴る。また、ポシェットに通帳と財布を入れて家の中を徘徊し何度も通帳や財布の残金を確認し通帳はボロボロになり、物盗られ妄想に支配された。また転倒し頬部を打撲、ガラスのテーブルを落とした際に下腿をケガする等、外傷が絶えない状況で目が離せない為に令和4年5月より老人保健施設に入所するに至る。

入所後、それまでできていた単純な生活動作にも混乱しできなくなり、せん妄は悪化し続けた。
主治医は至急にて検査の指示を出した。

さて、この方に、どのような変化が起きているのでしょうか?

答え:慢性硬膜下血腫(下記 図) 一見、認知症が増悪しているかのように見えますが、脳の硬膜の下に血種が出現しています。大きな血種で、至急の外科手術の適応になり即日、手術し回復に向かいました。